改正教育基本法の理念とそれに対する批判との乖離

 そもそも、改正教育基本法の目指しているものは、旧教育基本法の理念と全く違うものです。それを誤解した批判というのが大変多く、私自身の勉強にもなりましたし、教師の一部には物事の判断の出来ない人たちが含まれていて、それが問題なのだということを改めて痛感いたしました。
 では、その改正教育基本法の理念とは一体何なのでしょうか。それを理解するには、そのまえに旧教育基本法が成立した背景を知っておく必要があります。
 旧教育基本法は、戦後まもなく制定されました。それは、GHQの指導の下ではありましたが、戦前の教育から脱却するんだ、民主化された教育を目指すんだということを明確に示すための法律として、そして憲法に次ぐ重要な法律だということを明示するために基本法の名を冠されて、成立したのです。そのために、内容も日本国憲法において新たに認められた権利や考え方を擁護する立場のもので、逆に戦前の日本にあって諸外国から疎まれた愛国心などは削除された内容となっています。そのため、旧法成立当時から批判がありました。
 今回は、その点について、小泉純一郎前首相の「聖域なき改革」の方針の実現のための一部として、改めて教育基本法を改正していこうということで、中央教育審議会に諮問して改正の方向性を定めたものがそのまま教育基本法の原案として上がってきていました。また、国際化していく中で、世界中で活躍し、日本の発展に寄与できる人材の育成を掲げたという、日本の国益だけでなく世界の利益を考えた法案となっていたという点で、私は高く評価していました。もちろん、自民党の横暴なやり方には苦々しく思っていましたが。もう少し早く法案を作って、様々な場面で説明していけていれば、批判自体も小さく収まったでしょうし、何より教育行政に対する信頼回復のためと考えれば、安い投資だったのではないでしょうか。