化学における基礎・基本とは?

 最近、このことをしきりに考えています。普通、大学で化学を専門にしていても、こんなことには興味もないでしょう。なぜ、私がこんなことを考えるようになったかと言うと、大学での専門が「計算化学」になったからです。計算と基礎・基本、どういう関係があるのかなんて、やってみないとわからないことかも知れません。
 そういうわけですから、そもそも、計算化学って何なのか、というところから話していく必要があると思うわけです。計算化学とは、簡単に言うと「物理と数学によって化学を創る学問」です。これが、計算化学という研究分野そのものの本質だと思います。そして、これは究極の理論化学なのです。
 化学を創る、とは、本物のような化合物や化学反応を創ったりすることができるということです。これは、化学という学問の、そして物質の本質によるものです。
 化合物の構造、化学反応など、化学として扱う範囲のものは、全て電子の挙動によって規定されます。そして、その電子の挙動は、電子の持つエネルギーと、電子にかかる電場によって規定されます。ということは、電子の持つエネルギーと電子にかかる電場を数式として表すことができたなら、計算によって電子の位置とその運動を求めることができるということになります。これを行うのが計算化学です。
 しかし、こんなことを基礎・基本として用いるべきだ、などとは微塵も思っていません。難しすぎますから。私もコンピュータを操作しているだけで、実際に手計算を行おうなどと考えたことはありません。
 では、果たして何が基礎なのでしょうか。
 それは、電子の挙動を考えること、それが化学反応、化学的性質を決めている本質なのだということを理解するということです。そして、それを簡易的に用いれば、ほとんどの反応を考えることができます。それは、電気陰性度というパラメータです。電気陰性度とは、原子ごとに決まっている値で、どの程度の力で電子をひきつけることができるかということを表すパラメータです。
 これを用いれば、計算を行わずとも感覚的に電子の挙動を考え、分子内の電子の濃淡を見つけることができます。そうすれば、複雑な計算がなくとも、化学反応を考えることができます。
 あとは、中学校程度のレベルの物理さえ考えられれば、電気的に引き合うという概念がありますから、それを用いて化学反応を考えることができるようになります。