受益者負担とは?

 今回は、教育費用の受益者負担について考えたいと思います。
とは言え、この教育費用の受益者負担、目新しさのある議論ではありません。1971年の中央教育審議会(以下中教審)答申以来、様々なところで議論されてきています。しかも、その多くの議論同様、私も教育費用を学生が負担するという制度に反対であるという立場です。
 しかし、私としては他の人には出来ない新たな視点から物事を見つめていきたいと常に考えているので、あえて違う切り口から、教育費用を学生が負担するという現状がおかしなものであるということを立証していきたいと考えています。

 そもそも、公教育というのは何のために始まったのか。最初に始まったのはアメリカです。アメリカという国を作るに当たり、民主主義によって国を作るために必要なものとして公教育が強力に推進されたのです。それは即ち、衆愚政治に陥らないための防波堤でありました。ということは、公教育における受益者というのは政府そのものなのです。
 しかし、それだけのメリットでは、学歴を重ねるということに対して学生には特にこれと言った利益があるわけではありません。これでは、教育制度そのものが役に立たなくなってしまうのです。そこで、学歴による給与格差が生まれました。学歴が高いものほど有能である確率が高い、ということです。これによって、受けてきた教育による社会での格差が生まれ、学生側にもメリットが生まれてくるわけです。

 以上のことから、中教審答申にある学生が受益者であるという文言は根本的な部分では誤りであり、最大の受益者は政府で、学生の利益は付随的なものであるということがわかります。したがって、公教育の最大の受益者は政府であるから、政府が学費を負担するのが当然、ということになります。